診察室で泣く子どもたち
悲しい時、さびしい時、くやしい時、うれしい時、痛い時、こわい時、人はいろんな理由で泣きます。
6ヶ月未満の赤ちゃんはこわくて泣くということはほとんどありません。痛い時やおなかがすいたり気分がすぐれない時に泣きます。診察室ではベットに寝かされるのがイヤだったり、聴診器が触れるのが気持ち悪かったりすると泣きます。
8から9ヶ月を過ぎると人見知りが始まって、1才ごろになると診察室に入ってくるなり泣き出す子が増えます。これは”こわい”という感覚のあらわれです。ぬいぐるみや絵本などあの手この手であやしてもなかなか泣きやみません。でも小児科医は平気です。もちろん心臓のこまかい音をきいたり、おなかのくわしい診察は激しく泣いているとできないこともあります。けれど泣き方もいろいろな症状の判断に役立つ場合もあります。例えばいつも大声で泣いている子があまり泣かない時は「泣く力がないくらいしんどいのかな?」とか逆にふだんあまり泣かない子が泣いている場合は「痛みがとても強いのかな?」とか。あるいは泣いても泣いても涙が出ないときは体の中の水分が足りなくなってきている(脱水症)証拠です。だから診察室でずっと泣いていても大丈夫です。ただし、診察が終わったらしっかり抱きしめてあげて下さいね。お父さん、お母さんたちとゆっくり話ができるように泣きやんでもらえるとうれしいです。
2才から3才ごろになると多くの子どもたちが泣かなくなります。そのころに血液検査や予防接種(注射)などの痛い処置をすると次の診察の時にはまた泣きます。それでも平気です。そういう痛い経験を覚えているという発達のあかしでもあるからです。そうして成長されていくのを感じられることも私たちの大きなよろこびです。
大いに泣いてともに大きくなりましょう!